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2025年5月14日、XG初の世界ツアー最終公演となる東京ドーム公演に足を運びました。一般販売で取れなかったチケットを再販市場でなんとか入手し、幸運にもステージ全体を見渡せる良席でライブを堪能できたので、XGについて改めてメモを書いておきます。

ライブの感想

約5万人の観客で埋め尽くされた東京ドームは開演前から熱気に包まれ、幕が上がると7人組グループXGの圧巻のパフォーマンスに終始引き込まれました。アンコール後、メンバー全員が一人ずつファンへの感謝を述べる場面では、ココナ、ジュリン、ヒナタの言葉に思わず涙がこぼれました。

ココナは涙をこらえながら「絶対に泣かない!…宇宙でライブできるぐらいビッグなアーティストになるので、これからもよろしくお願いします」と力強く宣言し、ヒナタは「こんなにたくさん愛してくださる方がいるなんて信じられない…これからもっともっとALPHAZ(ファン)と素敵な景色を見たい」と語りました。

そしてリーダーのジュリンは「47公演やれたのは皆さんのおかげ。毎日が夢のようで幸せでした。まだまだこれからもっと宇宙に行くので、最高の景色を一緒に見たい」とファンとメンバーへ感謝し、7人は抱き合ってツアーの幕を閉じました。日本発のグローバルグループが東京ドームという大舞台で示した熱狂と感動――その現場体験を胸に、ここからはXGというグループの概要と魅力、さらにビジネス面での戦略と成果について分析してみたいと思います。

XGとは何か

XG(エックスジー)は2017年に始動した「XGALX」プロジェクトから誕生した7人組ガールズグループです。メンバーはジュリン、チサ、ヒナタ、ハーヴィー、ジュリア、マヤ、ココナの7名で全員日本人ですが、韓国式のトレーニングとシステムを基盤に育成され、約5年間の徹底した練習生期間を経て世界水準の実力を身につけました。

グループ名「XG」は Xtraordinary Girls(並外れた少女たち)の略で、その名の通り常識にとらわれない独自スタイルと世界観を掲げています。デビュー時期は2022年3月で、当時メンバー平均年齢は18歳ほどでしたが、ダンス・ボーカル・語学まで鍛え抜かれた完成度で突如シーンに現れ、国内外の音楽ファンを驚かせました。

プロデュースは韓国人と日本人のハーフで元K-POPアイドルでもあるJAKOPS (SIMON)氏が手掛けており、オーディション応募者1万3千人から選抜された練習生たちを、共同生活の中で育成しデビューまで導いています。XGは所属事務所エイベックスのグローバルプロジェクト第1弾アーティストであり、「K-POPでもJ-POPでもないX-POPを追求する」ことをコンセプトとしています。

実際にデビュー後の楽曲は全編英語詞で統一され、活動拠点も日本にとどまらず韓国や米国を含む世界全体を視野に入れて展開している点が特徴です。このように、日本発ながら多文化・多言語を巧みに取り入れた体制で、“世界で輝く新時代のガールズグループ”を体現しているのがXGなのです。

XGの魅力

パフォーマンス力 が群を抜いていること

XG最大の魅力は、その パフォーマンス力 が群を抜いていることです。長い練習生期間に培われたダンスや歌唱のスキルはデビュー時から既に世界最高水準で、ビート感の鋭いヒップホップダンスや力強いボーカルで見る者を圧倒します。実際、デビューからわずか3年で世界各地の大型フェスに次々招かれ、2025年には米国最大級の野外音楽祭コーチェラで日本人として初めて主要ステージのトリを務めるという快挙も成し遂げました。

ニューヨークでのHITCフェス出演時には1万5千人以上の観客を熱狂させ、その圧巻のライブ力が現地メディアでも高評価を得ています。

息の合ったダンスブレイクや安定した生歌はもちろん、照明・映像を駆使したライブ演出もクオリティが高く、東京ドーム公演でも巨大スクリーンに地球を映し出す演出などスケール感のあるステージングで観客を魅了しました。

楽曲とクリエイティブの独自性

次に 楽曲とクリエイティブの独自性 もXGの大きな魅力です。XGの楽曲はヒップホップ/R&Bを基調にしつつ、曲ごとにEDMやポップスなど様々なジャンルをミックスし、新しい音楽性を追求しています。全曲英語詞であることも相まってグローバルに親しまれやすく、リリックやサウンドは90年代R&Bへのオマージュと現代的トレンドを融合させたハイセンスな仕上がりです。

さらに毎回楽曲ごとに複数のリミックス版が制作・発表されるのも特徴で、例えば代表曲「LEFT RIGHT」のリミックスでは米R&Bシンガーのシアラとグローバルアーティストのジャクソン・ワンが参加し大きな話題となりました。またプロデューサーのSIMON自身がキュレーションするリミックス企画では、日本人と韓国人のラッパー計8名を招き、日本語・韓国語・英語が入り交じる多文化融合のトラックを発表するなど、クリエイティブ面でも他に類を見ない挑戦を続けています。ミュージックビデオも映像美やファッションが際立っており、メンバーそれぞれの個性を活かしたスタイリングと世界観でファンを楽しませています。

メッセージ性

メッセージ性にもXGならではの魅力があります。歌詞のテーマは恋愛を直接扱うことはなく、「私たちは最高にイケてる」「夢を叶えるために努力し続ける」など自己実現やエンパワーメントに繋がる内容が多い点が特徴です。

例えばデビュー曲「Tippy Toes」は自信満々に進む女性像を描き、続く「MASCARA」では「泣いたってマスカラは流さない(=どんな困難も乗り越える)」という強い意志を歌っています。こうした 「女性の強さ」 を肯定するメッセージが一貫しているため、世界中の若い女性を中心に「勇気をもらえる」「自分も頑張ろうと思える」と支持を集めています。

またメンバーの 多様性 や個性の尊重もXGの魅力です。7人それぞれキャラクターや得意分野が異なり、ラップが冴えるジュリン、パワフルな歌声のチサ、ダンスリーダーのヒナタ、ハーフならではのグローバル感をもつハーヴィー…といった具合に個が光っていますが、不思議とグループとしての一体感も非常に強い。実際ステージ上でもメンバー同士の信頼関係が伝わるパフォーマンスを見せており、練習生時代から支え合ってきた彼女たちの絆がファンの心を打つのです。努力を惜しまない姿勢も含め、「愛と個性と連帯」が共存する未来を体現するグループ――それがXGの魅力でしょう。

ビジネス面から見たXG

2024年の想定売り上げは数十億円

以上の各カテゴリ別の収益を合計すると、XGの直近1年程度における総売上金額はおよそ50~70億円規模(約4,000万~5,000万USD)に達すると推計されます。内訳としては、ライブ収益が全体の過半を占め、次いでグッズ販売やストリーミングが続く構図です。以下にカテゴリー別の概算をまとめます。

カテゴリ収益(推計)補足(根拠データ)
ライブ(公演収入)30~40億円動員40万人tokyoheadline.com×平均単価¥8k-¥10k(47公演、東京D含む)
フィジカル音楽販売5億円CDアルバム計20万枚超(NEW DNA他)en.wikipedia.org×単価¥2.5k
ストリーミング配信3~5億円Spotify総再生数10億回x.com×¥0.4/回 + 他プラットフォーム
グッズ販売10~20億円動員40万×購入率・単価(例:¥5kで10億円~¥10kで20億円)
タイアップ・広告出演等3~5億円NIKE・マクドナルド・資生堂との契約ja.wikipedia.org等の推定報酬
合計(推計)約60億円前後(約4,500万ドル)全カテゴリ合計値

世界的な人気を得つつあるXGですが、その裏には周到なビジネス戦略と大胆な投資があります。まず 売上面 から見ると、2024年の年間売上規模は合計で数十億円規模に達すると推測されます。

中でも最大の柱はライブ(コンサート)収入で、2024年5月から開始した初のワールドツアー「The first HOWL」はアジア・北米・欧州・豪州・南米を巡り全47公演・約35都市で開催され、ほとんどの公演がソールドアウトする成功を収めました。最終的な動員数は世界で約40万人に上り、仮に平均チケット単価を1万円程度とするとチケット収入だけで数十億円規模(東京ドーム公演は5万人動員で約7.5億円)になる計算です。次に音楽ソフト(CDやダウンロード)収入があります。XGはシングル中心の展開でしたが2024年11月に2ndミニアルバム『AWE』をリリースしており、国内外のフィジカルセールスや配信売上を合わせて数億円規模の収益を上げたと考えられます。

また、ライブ会場や公式オンラインショップでの グッズ売上 も見逃せません。ペンライトやアパレル、写真集など多彩な商品展開でファンの購買意欲を刺激し、ワールドツアー期間中のグッズ売上は推定数億円に達したでしょう。さらにSpotifyやYouTubeをはじめとする ストリーミング収入 も重要です。XGは英語曲主体の利点を活かして海外でもストリーミング再生数を伸ばしており、代表曲「LEFT RIGHT」は米Billboardのトレンドチャートで1位を獲得するなど日本人初の快挙も成し遂げています。世界中で再生された楽曲のストリーミングからの年間収入は数億円規模と見積もられます。最後に その他の収入 として、企業タイアップ出演料やグッズ以外のライセンス収入、ファンクラブ会費などが挙げられます。特に2024年以降、XGは一流企業とのコラボレーションが相次ぎ、2024年春にNIKEのキャンペーンモデル、2025年にはマクドナルドや資生堂「アネッサ」のブランドミューズに起用されるなどブランドとのタイアップ契約が増加しています。こうしたタイアップ出演料やライセンス料も数億円規模に積み上がっている可能性があります。以上を合計すると、XGはデビューから2〜3年で年間十数億〜数十億円の売上を生み出すアーティストに成長したと考えられます。これは日本の女性グループの中でも突出した規模であり、まさに“世界基準”のビジネス成果と言えるでしょう。

エイベックスの投資コスト

以上の推定をカテゴリごとに表にまとめます。※金額は公開情報や業界知見に基づく推定値であり、実際の投資額とは誤差がある可能性があります。

費用カテゴリ2017〜2024年 推定投資額補足
練習生トレーニング費約4〜5億円ボーカル・ダンス指導、語学・生活支援等koreaboo.com。5年間/7名分en-ambi.com
デビュー前開発費約1億円前後コンセプト企画、クリエイター招聘、プレデビュー映像制作en.wikipedia.org
楽曲制作費数千万円規模作詞作曲・レコーディング・音源制作(英語曲中心)www2.jpx.co.jp
MV制作費約2〜3億円程度複数曲で高品質MV制作(VFX多用)ameblo.jp
広告宣伝費(日本・韓国・グローバル)1億円以上デジタル広告、タイムズSQ広告等グローバル露出toyokeizai.net
海外展開・マーケ費1〜2億円規模韓国拠点運営、ワールドツアー展開、現地プロモ対応koreajoongangdaily.joins.com
マネジメント人件・インフラ費1〜2億円程度スタッフ給与、練習施設・スタジオ維持等avex.com
プロモーション活動費数千万円〜1億円弱SNSコンテンツ制作、イベント運営等www2.jpx.co.jp
その他(衣装・美容・物流・法務)数千万円規模衣装・メイク、輸送費、契約関連手続きなど

もちろん、ここに至るまでに投入された 投資コスト も莫大です。エイベックスはXGを「グローバルで活躍するIP(知的財産)の創出」プロジェクトと位置づけ、2017年から現在まで積極的な投資を継続してきました。まず 育成費 として、2017〜2022年の5年間におよぶ練習生育成期間にかかった費用があります。合宿所での生活費・語学教育費・ダンスボーカル指導費・トレーナー人件費など、7人を世界レベルに鍛え上げるための投資は数億円規模に及んだと推測されます。次に コンテンツ制作費 です。

XGはデビュー以降、楽曲ごとに複数本のミュージックビデオやパフォーマンス動画、ドキュメンタリー映像を制作しており、1曲についても多数の映像コンテンツを投入する戦略を取っています。実際「SHOOTING STAR」では通常MVのほかダンスプラクティスビデオやリリックビデオなどが公開され、ファンは多角的に作品世界を楽しめるようになっています。

こうした映像制作や録音制作には著名クリエイターの起用も含め惜しみない費用がかけられており、プロモーション・制作費 として少なく見積もっても数億円以上は投入されたでしょう。さらに ライブ演出・ツアー費 も大きな投資項目です。初のワールドツアーとなった「The first HOWL」では、大規模ステージセットや特殊効果、世界各国への機材輸送・ツアークルー帯同など相応のコストが発生しましたが、XGは質の高いライブを実現するためこの部分にも大胆な予算を充てています。

例えばアートディレクターに著名クリエイターのYOSHIROTTEN氏を起用し最先端の演出を行うなど、ライブ制作にも企業コラボを含む投資を行っています。最後に 海外展開コスト として、拠点構築や現地プロモーションへの投資があります。

XGは韓国に拠点を置きK-POPのシステムを活用すると同時に、北米市場攻略のためエイベックスUSAが米マネジメント会社S10 Entertainmentへの出資・提携も行いました。現地スタッフの雇用やプロモーターとの契約、SNS広告展開費用など、海外市場開拓のための先行投資も相当額に上ります。以上の育成・制作・ライブ・海外マーケティング各方面の費用を合計すると、エイベックスがXGに投じた総投資額は数十億円規模(おそらく数十億円の前半〜中盤)に達していると見られます。エイベックスの経営陣も「XGへの積極的な投資は継続」とIR資料で明言しており、当初の想定以上の投資額に達したとも報告されています。この大胆な投資判断こそが、XGという世界水準のアーティストを生み出した原動力と言えるでしょう。

海外展開と戦略的マーケティング

もう一つ、XGの成功を語る上で欠かせないのが 海外展開と戦略的マーケティング です。XGは当初からグローバル市場を主戦場に想定しており、その戦略は「まず世界、そして日本」という大胆なものでした。活動拠点を日本だけでなく韓国にも置き、K-POP業界のネットワークやノウハウを活用しつつ、全曲英語詞で欧米含む全世界にアピールするという二正面作戦を展開しました。具体的なマーケティング戦略として特筆すべきは SNSの徹底活用 です。

デビュー前からYouTubeやTikTokに高クオリティのパフォーマンス動画を投稿し、「一体この上手すぎるグループは誰?」と世界中で話題を呼んだのがXGでした。デビュー後も各楽曲ごとに公式・非公式を問わずダンスチャレンジ動画をTikTokで拡散させ、Z世代のタイムラインに自然と入り込むことに成功しています。

例えば「LEFT RIGHT」はTikTokダンスがバイラルヒットし、それがストリーミングヒットにも直結しました。またSNS上でメンバー自身が英語・日本語・韓国語を駆使して頻繁に発信・交流しており、ファンとの距離を縮めるデジタル施策にも余念がありません。

さらに 企業タイアップ戦略 も巧みです。先述のNIKEやマクドナルドとのコラボの他、ゲーム会社と組んだ楽曲展開も行いました。2024年4月には人気オンラインゲーム『VALORANT』とのコラボ曲「UNDEFEATED」を配信し、新たなファン層の開拓に成功しています。

これはゲーム×音楽のタイアップという最近のトレンドをいち早く取り入れた施策でした。このように多方面の企業とタイアップすることで音楽ファン以外にも接点を持ち、市場拡大に繋げています。加えて 映像ブランディング にも注力しています。

YouTube上でドキュメンタリーシリーズ『XTRA XTRA』を公開し、メンバーの素顔や成長物語を継続的に発信してファンのロイヤリティを高めています。公式ファンクラブ「ALPHAZ」も発足し、コミュニティ運営を通じたファン基盤強化にも乗り出しました。総じてXGは、デジタル時代の波に乗ったマーケティングと伝統的な音楽ビジネスの双方を巧みに取り入れ、日本発のアーティストとして異例とも言える世界展開の成功例を作りつつあると言えるでしょう。

総括

東京ドーム公演を目の当たりにし、改めて感じたのは「ついに日本から世界基準のガールズグループが生まれた」という大きな驚きと誇りです。かつて日本国内に留まっていたアーティストが、今や世界中をツアーで回り各地で熱狂的に迎えられる――XGの姿は、新時代のエンターテインメントにおける日本の可能性を示しています。そこには長期視点で莫大な投資を行い、人材育成からグローバルプロモーションまで一貫して支え続けたエイベックスの尽力と覚悟がありました。

約7年もの歳月をかけて“ 強いIP ”を育て上げた手腕に対しては、音楽ファンのみならずビジネスの観点からも大いに敬意を払うべきでしょう。XGというプロジェクトは、単に一グループの成功に留まらず、日本の「クールジャパン」戦略の新たな成功モデルになり得るとも指摘されています。実際、世界的ガールズグループの輩出は日本音楽業界にとって悲願でもあり、XGはその道を切り拓いたパイオニアと言えます。

最後に、もしXGに興味を持った方はぜひ彼女たちの公式YouTubeで公開されているドキュメンタリーシリーズ『XTRA XTRA』をご覧ください。メンバーの努力や葛藤、成長の軌跡がリアルに描かれており、ステージ上の完璧な彼女たちとはまた違った人間味あふれる素顔に触れることで、より一層XGの魅力に引き込まれるはずです。東京ドーム公演でジュリンが語ったように、XGは「まだまだこれから、もっともっと宇宙(世界)に」飛躍していくでしょう。今後予定されている世界的な大型フェス出演(コーチェラ2025など)や新曲リリースを控え、XGはさらなる高みへと進んでいきます。その歩みをビジネス面・アーティスト面の両方から引き続き注目し、日本発グローバルアーティストの快進撃を応援していきたいと思います。

参考資料・出典:

  • 山陽新聞デジタル:【XG 東京ドーム公演 最終コメント全文】「もっともっと宇宙に」メンバーコメント
  • Kobe News:【XG初の東京ドーム公演】世界35都市・約40万人動員のツアー完遂
  • GOETHE:「世界が熱狂する、日本人ガールズグループXG 4つの魅力」
  • Wikipedia:「XG (音楽グループ)」特徴・来歴
  • SUZACQUE (note):「XGに学ぶAI時代のビジネス戦略」
  • Billboard JAPAN:XGワールドツアー東京ドーム公演レポート
  • その他、XGALX公式サイト・ニュースリリース、オリコンニュース、エイベックスIR資料など