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今回は人材業界で急成長を続けるレバレジーズの岩槻CEOの見解を中心に、今後の労働市場がどう変化していくかを深掘りします。

すでに売上1,000億円規模に到達し、2026年には2,200億円に届くとも言われる同社。年齢構成や採用方針、ワークライフバランスに対する考え方、さらにはAIがもたらす人材市場の未来像に至るまで、興味深いキーワードが散りばめられています。

新卒が全社員の7割を占める彼らが、なぜ人材不足の時代に圧倒的な成長を実現できているのか。

人材業界が抱える大きな転換期

需要拡大から市場縮小へ

レバレジーズ岩槻CEOの見立てによれば、人材市場は短期的な需要拡大から、いずれ劇的な縮小期へ移行するといいます。今はコロナ禍明けの採用需要や少子高齢化の影響で、企業の「人材が足りない」という声が大きくなっていますが、2027年前後から労働人口の急減が加速し、需給が深刻化する一方で、採用コストを負担できない企業が増えるなど、市場全体の規模が縮小する可能性が高いのです。

  • 若年労働者が減少する: 生産年齢人口の減少により、これまでのように新卒や若手に依存する採用戦略は維持が難しくなる
  • 企業の条件緩和が進む: 年齢制限を大幅に緩くしたり、外国人採用を積極化する企業が増える

「小さなリクルート」の戦略

レバレジーズは「リクルートの小さい版」と自らを位置づけ、人材紹介・派遣・RPOなど多角的にサービスを展開してきました。すでに売上1,000億円を超え、直近では月時ベースで1,450億円以上の規模に達しているそうです。岩槻CEO曰く、「市場を適切に選び、他社よりも懸命に取り組む」ことで大きく伸びてきたとのこと。急成長を遂げる背景には、採用に苦しむ企業のニーズを正確に捉えたサービス戦略と、若い才能を積極的に登用する組織文化があるようです。

平均年齢26歳の組織づくり

新卒7割はなぜ可能なのか

レバレジーズの特徴のひとつとして、社員の平均年齢が26歳前後という非常な若さが挙げられます。しかも新卒採用が全社員の7割にも及ぶというのです。こうした構成比を維持できる理由として、「若いうちから大きな裁量を与える」「成長意欲のある人材を採用する」という方針が徹底されていることが大きいといいます。

  • 毎年数百人規模の新卒を採用: 1年半から2年で管理職になる例も珍しくない
  • 実態を正直に伝える: 働く時間は長くても、その分の成長や成果を期待できることを面接段階から明確化

ワークライフバランス反対?

「ワークライフバランスという概念に反対」というフレーズは一見きわどく映りますが、その背景には「若い期間に集中して成長を追求し、後からプライベートの時間を十分に確保していく」という考えがあります。もちろん、社員の健康や環境整備がまったく軽視されているわけではありません。むしろ若手を最短で育成し、彼らが管理職や新規事業開発に早期にアサインされる仕組みを構築しているからこそ、本人も納得して働いているといえます。

AIの台頭と人材ビジネスへの影響

AIはホワイトカラーを淘汰する?

人材市場でも、生成AIや自動マッチングが進むことで「ホワイトカラーが大幅に減る」という声が取りざたされています。富山和彦氏などが主張するように、調査・事務作業やバックオフィス系の多くが自動化されるシナリオがある一方、岩槻CEOは「営業のように、人間だからこそ成り立つ役割は依然として需要が高い」と見ています。

  • 調査や資料作成はAIで置き換えやすい
  • コミュニケーションのグリップ力が重要な営業職は残る

マッチングアルゴリズムの高度化

人材紹介サービスにおいて、AIがアルゴリズムを強化し、適切な企業と候補者を高速でマッチングしてくれるのは確実です。今後は大手プレイヤーほど豊富なデータを活用でき、高精度のマッチングが可能となるため、規模の経済がより顕著になるでしょう。

  • 大規模データでアルゴリズムを鍛える: リクルートやレバレジーズなど、多くの候補者情報を持つ企業が有利
  • 自動化だけでは済まない最後の難関: 候補者の個性や企業文化の相性はまだ人間が見極める場合が多い

労働人口減少と外国人採用の行方

エッセンシャルワーカー問題

介護や医療、保育、接客など、社会を支えるエッセンシャルワーカー領域は今後さらに人手不足が深刻化し、賃金が上がる可能性があります。ここでは「人材紹介」のビジネスモデルがより活性化し、AIと人間のコラボによる効率的マッチングが進みそうです。

  • 単価上昇で紹介事業が成り立つ: 既に看護師の領域などで専門エージェントが急成長
  • 高齢者対応や介護の需要拡大: 企業や施設側が外国人材の受け入れを本腰で進める動き

外国人労働者がキーになる?

「日本で働く魅力が円安で薄れつつある」という指摘もある中、やはり労働力不足を考えると外国人の受け入れ拡大は不可避です。ただし、日本国内の制度や企業の準備不足がネックになる恐れがあり、本格的に効果を発揮するまでには時間を要するでしょう。

  • 2030年代以降の選択肢: 社会インフラを維持するために外国人材をどう活用するか
  • 企業体質やカルチャーの変革: 組織側も多様な人材が働きやすい職場づくりを進める必要

2027年以降に始まる市場縮小シナリオ

単価上昇の先にある飽和

2027年ごろから顕在化するとされる労働人口の急減は、人材業界にとって「需要があるのに企業が十分に報酬を出せない」事態を生む可能性があります。結局、参入数は多いままではいられず、淘汰や集約が進む見込みです。

  • 参入しやすいが生き残りにくい構造: 許認可が簡単な人材業界だが、顧客企業が負担できる紹介料に限界がある
  • 全体のパイは小さくなる: 労働力が減るため、いずれ需要サイドも弱ってくる

大手数社への集約

看護師分野では100社以上が新規参入したものの、結果5社程度に集約された例を考えると、人材領域全体でも大手が勝ち残る構造になりやすいと予想されます。大手ほどデータやアルゴリズムで優位性を発揮でき、さらに大量採用の組織力で安定したサービス提供ができるからです。

  • 専門特化型×大手資本が優位: 特化領域のノウハウと大規模なマーケティングが結合
  • 既存事業のM&A加速: 収益やノウハウのある中堅企業が大手に吸収されていく

まとめと展望

人材業界の風雲児ともいえるレバレジーズ岩槻CEOの考えを紐解くと、以下のポイントが浮かび上がってきます。

  • 短期的な拡大と長期的な縮小: 2027年を境に人材市場は大きく変動し、エッセンシャルワーカーなどで短期の需要拡大がある一方、中長期では労働人口減で市場全体が縮小へ
  • 業界大手への集約傾向: AIを活用したマッチングやネットワーク効果により、大手企業ほどデータを蓄積し高精度なサービスを提供できる
  • 若者主導の組織づくり: 新卒中心かつ平均年齢26歳の組織は、ワークライフバランス概念にとらわれず「若いうちの成長を最大化する」方針で成果を出している
  • AIによるホワイトカラー淘汰は限定的: 事務職や調査業務の一部はAIで代替可能だが、営業やコミュニケーション面では依然として人材が活躍する領域がある

このように、表面的には「人材不足だからずっと儲かる」と思われがちな人材業界にも、大きな分岐点や変化が待ち受けています。レバレジーズの成功例は「若手でも責任ある仕事を任せ、高いモチベーションで成果を出す構造」を徹底した結果ともいえますが、それは労働人口減少とAI活用という巨大な波を見据えたうえで、人材企業がどう進化すべきかを体現しているようにも映ります。

最終的には、労働市場全体のプレイヤーである企業、候補者、そしてサービス提供者がそれぞれ意識を変えていかねばならない時代に突入しているのです。AI技術が進む中で、業界自体がどのように再編されていくのか。レバレジーズの驚異的成長が示すように、選ばれるのは時代の変化を迅速に察知し、行動に移せる企業や個人ではないでしょうか。