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最近よくタクシーを使う事があって、いつも思う事があるのだが、どの通りを使うか聞いて来る。そんなの勝手に決めて、勝手に行ってくれ。渋滞状態等いちいち調べてタクシーは止めてないのだ。
仕事をして、お客様からお金を頂いている以上、常に自分はプロであるという自覚と自信を持って仕事に取り組まないといけない。
以前、サイバーエージェントの藤田さんのブログでもタクシーの運転手について書かれていたが、自分が行き先だけ伝えたら後は、そこに最短で、お客に負担をかけないルートを考え、提案し、実行するべきだという内容。ひどく共感した。
驚きはすぐそこに。
最近美容室に行って、非常に驚いた事があった。
ここ3ヶ月お世話になっている美容師さんに切ってもらった時の事。期間的には前に行っていた美容室の方が1年以上長い。
長さは、ある程度こんな感じというイメージは伝えたものの、ほぼ適当な状態で全く決まってないと伝え、カラーも金髪だったので、暗めの色にして欲しいけど、暗すぎるのは微妙かもとだけ伝えた。
カラー担当のアシスタントの方が結構暗めに染めますねと話していて、不安しかなかった。全く自分の考えているものと違うものが仕上がって来たらどうしようという不安は何時もある。
他人が信用出来ないという性格もあるのだろうが、伝えた方がそれ通りに上手くいく可能性が高いと考えているからだ。
しかし、最近は意図的に相手の人に任せるようにしている。理由は単純で考えるのがしんどいから。それでも彼是無駄に思考してしまうので、流れに任せて行動するようにしている。
そんな事をぼんやり考えて、シャンプーが終わり、着席した瞬間に見慣れない光景があった。実際仕上がりは、雰囲気のある黒髪(ほぼ真っ黒)になっていた。
もしかしたら、これまでの自分だったら何してくれている、と考えているかもしれない。『どうですか』なんて聞かれた暁には小刻みに震える頬を抑えながら、まぁ次から行かなければいいか、何て事も考えるはずだった。
『黒に少しグレーを混ぜました。』
全く異なった感情が押し寄せた。
何だろうこれは。理解が出来なかった。
出来上がる前は全く想定していない、こちらの期待を裏切りかつ、期待以上のも、自分が思いも寄らなかった色がそこにあった。何のオーダーもしていない、寧ろ金髪から黒を少し入れれば良いという想定で、終わる事には茶色系の黒になっていると考えていた。
それがグレーとは。何も言ってない。何で入れたんだろう。それだけしか考えられなかった。
相手の言葉の端々から潜在的なニーズを吸い上げ、それを自分の技術や提案力によって形にするという相手の行動に圧倒された。
これが、プロなんだという事を認識させられた。
プロは、相手に想像以上のもの、相手の見えていない側面を見せてあげる、良い所を更に生かしてあげる、その結果生活や人生を変化させるというものだ。新しい体験、新しい体験に寄って1が1じゃなくて、10になるような事をシンプルにさらりと行う。やっている風じゃなくて、現実に変える。
これは美容室での体験の例ではあるが、冒頭のタクシーの件と酷似している。
つまるところ、外さない提案をするだけの技術。技術に裏打ちされた自信がある。
職人。
そもそも、席に座るなり、『疲れているね?』と言われる。
自分は家を出たらスイッチを入れて仕事や出会う人と楽しく有りたいので、全開で居る事に努めていたのだが、見透かされたのだ。
コレに関しても驚いた、仕事で毎日顔を見合わせている人間には今日も煩いな、喧しいな、なんて事しか思われてないだろうと思うけど。
『そう見えます?』最大限の強がりだ。
『そりゃ毎日人みてるからね、分かるよ。』
(おれは3度しか会ってないぞ)と思ったが、完全に見透かされた。
それから、仕事が大変なのかとかの流れから、
美容師さんとお互いの経営者をしている父親の話で盛り上がった。
強がりで、不器用で、負けず嫌い。信じてた人に騙されたり、逃げられたり、
もっと上手くやれよってずっと思ってた。
でも今は、すげぇ、真似出来ない。早く楽にさせてあげたい、
という話で共感した。
色々話して、プロの仕事に触れ、一瞬だけ自分のこれまでを省みて、帰宅する時には、なんだか無性に恥ずかしくなったが、
帰り道にLINEで、今度飲みに行かせて下さいとだけ伝えた。
昔、親父がよく言っていた言葉が、以下だ。
アメリカンドリーム
燃えよ、闘魂
勝手に生きろ。
大変恥ずかしい。
だけど、この時だけは、いささか格好よく思えた。